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広報誌gain

運動中のバランスについて

フィジカルコンタクトの多いサッカー選手などは特にその傾向が強く現れています。連日ケガをした選手の報道が後を絶ちません。もはや彼らには「好調」と言うものがないのかもしれません。少なくとも年間を通じてケガも疲労もなく安定した状態というのは限られた期間だけではないでしょうか。

それでも彼らは試合に出場し高いパフォーマンスを発揮しています。彼らはどのようにトレーニングを行っているのでしょうか。「スポーツ選手はいつも鍛えてるんじゃないの?」確かに彼らは日々のトレーニングを欠かしません。しかし「トレーニング=鍛える、体力を向上させる」考えると少し違うのかも知れません。

プロ野球選手は自主トレ、キャンプ、オープン戦を経てシーズンを迎えます。自主トレではたくさん走ったり筋トレをしたりして基礎体力の向上を目指します。長いシーズンを持ちこたえる体力を養うと言えば分かりやすいでしょうか。キャンプでは実戦形式の練習で体力の向上を図りつつ個人の技術やチームとして野球が出来る状態を作ってゆきます。そしてオープン戦で全てを仕上げてチームの完成度を高めてゆきます。つまり、特定の期間に特定の目標を設定してトレーニングを行い、シーズンが始まるとトレーニングは試合に臨むためにコンディションを整えるものに変わってゆくのです。

柔道やレスリングなどの格闘技は相手のバランスを崩すことで自分に有利な体勢に持ち込んだりポイントを奪ったりします。またサッカーやラグビーなど相手プレーヤーとの接触が許される競技では相手のバランスを崩すことでボールを奪ったり、自由にプレー出来ないようにしたりします。つまりこういった競技の選手たちにとっては、常にアンバランスな状況の中でいかに自分のバランスを保ってプレー出来るかが重要なポイントになります。

 陸上競技の短距離走や漕艇(ボート競技)など選手同士の接触がない種目ではどうでしょうか。短距離走では着地した足に受ける地面からの反発力とバランスをとり、漕艇ではオールに伝わる水面からの抵抗とバランスをとって運動を続けてゆきます。他人に邪魔されない分バランスを崩すことは少ないのですが、地面からの反発や水面の抵抗といった外力は選手の運動によって微妙に変化するため常に一定というわけではありません。その微妙なバランスの変化の中で同じ運動を続けなければならず、大きなバランスの乱れは結果に大きく影響するため失敗は許されません。ですから、同じ動作を正確に何回も繰り返すという意味ではシビアな競技と言えるのではないでしょうか。では、こういった選手たちのバランスの良し悪しはどうやって判断出来るのでしょう。

安定したバランスとは

 平地で立っている時のバランスを考えてみましょう。両足に均等に体重が乗っている時、左右の肩を結ぶライン、左右の骨盤を結ぶラインはそれぞれ地面と水平を保っています。これは誰もが安定したバランスです。したがって、この二つのラインを地面と水平に保って運動すれば基本的に運動中のバランスも安定すると考えられます。もちろん運動中は「安定して立っている」姿勢のまま動いているわけではありません。運動中の体は上半身と下半身がねじれたり、体全体にうねりが生じたりします。したがって、ある瞬間ではバランスを崩しているように見えることもあるでしょうが、選手により大きな力がかかっている時ほどこのバランスに近い状態が保たれているのではないでしょうか。

短距離走や漕艇ではこのバランスのままゴールまで行ければ好記録が期待できるでしょう。しかし、レースの後半、特にゴール付近では体力も限界に近くなり最後の力を振り絞るような動きになりやすいものです。そうなると不必要な力が動きを硬くて、ぎこちない動きになったりします。ゴール付近でもリラックスしている選手ほど上手に外力とバランスをとって運動していると言えるのかも知れません。

格闘技やプレーヤー同士の接触がある競技では常に自分に有利な状況でプレーすることは難しいでしょう。競技中はバランスを崩されたり、立て直したりすることを繰り返し行うことになります。その中で、決定的な場面で自分に有利なバランスでプレーできたり、体勢を崩されながらも強引に技をかけたり、あるいは相手の厳しいマークにも何事もなかったかのように自分のバランスをキープしてプレーしたりといったさまざまな場面に私たちはシビレルのではないでしょうか。そしてシビレタ後はスローモーションをじっくり観察して肩のラインや骨盤のラインに注目してみて下さい。プレーヤーのイメージや感覚を共有できるかも知れません。


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