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広報誌gain

糖尿病について

子供のころに見た4コマ漫画で、健康診断用に摂った人のオシッコにイタズラで砂糖を入れるシーンがありました。次のコマではオシッコの持ち主が医者から「糖尿病」を宣告されてびっくり仰天するというオチですが、それを書いた漫画家さんがまさか糖尿病は「甘いオシッコが出る病気」だとは思っていなかったでしょう。

以前、糖尿病は「成人病」と呼ばれ20歳を過ぎた「大人」がかかる病気でした。現在では皆さんご存じのとおり「生活習慣病」と呼ばれ、年齢に関係なく私たちのライフスタイル、特に食習慣や肥満に深く係わっていることが広く知られています。

まずは糖尿病が発症するメカニズムをおさらいしてみましょう。食事を摂ると血糖値が上がります。言い換えると血液中の糖質の量が増えるということですが、これを合図にすい臓からインスリンが分泌されます。筋肉などの細胞にはインスリンの受容体があり、ここにインスリンが入り込むと各細胞は糖を取り込みエネルギー源として蓄えます。

各細胞に十分糖が行き渡ると、余った糖質は脂肪細胞が引き取ります。これを繰り返すと脂肪細胞が大きくなり肥満になるわけです。脂肪細胞にもインスリンの受容体がありますが、最大限に肥大した脂肪細胞は受容体にふたをしてインスリンを受け付けなくなります。その結果行き場を無くした糖質が血管中にあふれてしまいます。これが糖尿病です。

糖尿病は様々な合併症を引き起こします。それは血液中の糖が血管壁に付着して細胞を破壊するからです。細胞が壊れた血管からは出血が起こり、出血した血液は血管内で固まって血管を塞いでしまいます。特に毛細血管の多い網膜や腎臓、血流の滞りやすい足先で起こりやすく、くも膜下出血や壊疽(えそ)といった症状が糖尿病の合併症として知られています。したがって肥満にならないことが糖尿病にならないための最低条件だというのがこれまでの常識でした。

ところが、です。日本人の糖尿病患者の75%が肥満ではなく、日本では肥満でなくても糖尿病になることが珍しくないというのです。一体どういうことでしょうか。それは食事で摂取する脂肪の量に関係があります。血液中の脂肪は脂肪細胞のインスリンの受容体に入り込みインスリンに仕事をさせないように邪魔をします。すると体はそれに対抗してさらにインスリンを分泌します。

もともと狩猟民族の時代から脂肪を多く含む肉を摂取してきた欧米人は脂肪の摂取(60g/日)以上にインスリンが分泌されるように長い年月をかけて「鍛えられて」きました。言いかえれば現代の欧米人は脂肪vs.インスリンの戦いに勝ち残った人種なのです。

一方、江戸時代まであまり脂肪を摂取していなかった(19g/日)日本人は最近何十年かの「食の欧米化」によって肉を多く食べるようになり脂肪の摂取量も増えてきました(54g/日)。その結果、インスリンの働きが阻害されるという状況になっていると考えられています。日本人の脂肪vs.インスリンの戦いはまだ始まったばかりなのです。

さてインスリンの分泌異常とも言える糖尿病ですが、このような状況に対処するには脂肪の摂取を抑えることはもちろんですが、運動によって筋肉への糖の取り込みを活発にすることが有効です。そこでお勧めしたいのがニートです。

ニートとはNon Exercise Activity Thermogenesis の頭文字をとったもので直訳すると「非運動性熱産生」です。もう少し平たく言うと「積極的な運動以外でのエネルギーの消費」、「基礎代謝プラス日常生活で消費するカロリー」ということでしょうか。要するに通勤・通学、家事などによるエネルギーの消費ということですが、例えば通勤・通学で最寄り駅まで移動する場合、車で送ってもらうより自転車や徒歩で移動すればニートが多いつまり消費するエネルギーが多いということになるのです。

隠れ肥満同様に日本人にとっては糖尿病も外見からは判断が付きにくい病のようです。今一度ご自分の食習慣を見直すとともにニートを増やす工夫をしてみましょう。

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